【考察】メタファー:リファンタジオに見る「階級社会」と「英雄像」

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© ATLUS / SEGA
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こんにちは、とらおです。
今回は『メタファー:リファンタジオ』の世界をより深く味わうために、物語の根底に流れる“階級社会”“英雄の存在意義”に焦点を当てていきます。
本作は社会批評と人間心理の描写が随所に散りばめられており、それがプレイヤーの心を強く揺さぶる要素にもなっています。
こちらの記事は購入の参考に、ではなくプレイをした後により理解を深めるために読んでいただけたら嬉しいです。
私とは異なる意見もぜひ教えていただけたら幸いです。

① 八大種族とその歴史的差別構造

本作の舞台「ユークロニア王国」は、複数の種族が共存する連合国家。しかしその“共存”は名ばかりで、実際は明確な階級差別に支配されています。

まずはおさらいとして、本作に登場する8種類の種族についてまとめます。

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1. クレマール族

連合王国で最大の人口を誇る種族。頭の両側に小さな「角」がある。  合理的で自由な気質だが、他種族を無意識に見下す傾向を持つ。

2. ルサント族

クレマール族に次ぐ人口を持ち、長く突き出た“耳”が特徴。身体能力に優れ、両手で扱う武器を片手で扱えるほどとも言われる。 誇り高く、優劣を求める性質から他種族との摩擦も生じやすい。  

ユージフ族 

モモンガのような“翼”とウサギのような“耳”を持つ小柄な種族。見た目が他種族と異なり、小柄で軽快な印象。  見た目の違いと少数派ゆえに差別を受け、貧しい暮らしを強いられている者も多く、その影響が他種族に対して排他的に捉える一面も。

4. ニディア族

大きな瞳や人目を引く“明るい髪色”など、印象的な外見を持つ種族だが、そのためか周囲の人間を惑わす種族と揶揄されている。一般的な体格をしているが、本来の姿は小さな子供のような見た目をしているが、偏見の目から逃れるため本来の姿を隠している。

5. パリパス族

動物の耳を持つ種族。身体的特徴や楽観的/短絡的な思考から他種族から“下位”と見なされる。奴隷や人体実験など、非人道的な扱いも受けることも。

6. イシュキア族

優雅な“翼”を持つ種族。切れ長のまつ毛や知的な顔立ちを持つ者が多い。知能に優れ、学者や聖職者といった立場に就くことが多い。他種族に距離感・優越感を感じ、壁を作る傾向にある。

7. ムツタリ族

国教である惺教とは異なる宗教を信仰する種族。三つ目であることから顔を隠していることが多く、異教徒として、差別的な扱いを受ける。彼らが住む孤島があり、外の社会との交流は忌避されている。

8.ローグ族

長命だが、生きている間のほとんどは中年程度の見た目すごす種族。ゆえに年齢・経験を刻んだ風格を持つ。 年功序列・伝統重視の傾向が強く、現代社会にはそぐわないとされて立場が揺らぐことも。  

上位種族には貴族的血筋を有する種族や知識に優れた種族、個体数の多い種族が位置付けられていおり、下位種族には知能が低い種族や個体数が少ない、信じる宗教が異なるマイノリティの種族が位置づけられています。

その構造はまるで現代社会の縮図のようです。

皆さんも日々生活する中で同じように感じることがあるのではないでしょうか?
人種や政治などの大きな問題ではなくとも、例えば仕事に熱意を持つ少数の人間を、ダラダラと仕事がしたい少数の人間が数の暴力で、排斥する。風変わりな服装をしている、周囲と異なる志向を持つ人を見て”変”だと揶揄する。
剣と魔法のファンタジーである「ユークロニア王国」と経済と科学の「現代社会」がはらむ同様の課題が突きつけられます。

このゲームで興味深いのは、主人公が他種族の仲間と共に成果を上げても、差別意識はなかなか消えてはくれないこと、しかしながらそしてそれが徐々に変わっていくことです。歴史的、もっと言えば根源的な恐怖や優越感はそう簡単には変わらない。それでも信念を持って行動し続けることで、その一端に触れた者から少しずつ、だが確実に変わっていく。人間の弱さと強さの二面性が、種族間のヒエラルキーとして可視化されているのです。

②宗教で別れる階級社会

本作では、宗教もまた差別のファクターとして機能しています。
ユークロニア王国では惺教という宗教が国教として信仰されています。
“神”への信仰が人々を導くように見えて、その実態は支配構造の温存です。神に仕える聖職者階級は民衆より上位に置かれ、信仰心の強弱すら社会的価値を左右し、国家の運営にまで影響を及ぼしています。「信じる者は救われる」ではなく「信じない者は排斥される」という考えが社会の共通認識としてもはや一般的になっています。

この構造もまた、現実世界とユークロニア王国の結びつきを強くしています。信仰が純粋であればあるほど、それを利用しようとする者が現れるという、現実でもしばしば起こる、宗教と権力の関係を表しています。

現代でわかりやすくいえば、国民の大半がキリスト教を信仰するアメリカが、国を挙げて他宗教信者を、国を挙げて排斥するようなイメージでしょうか。現代社会で起こったのであれば、そのほかの国々から非難は免れない大事件です。ですが、過去にはこのような思考が実際に存在していました。ユダヤ人の迫害などがこれにあたります


メタファーの舞台でユークロニア王国は、全くの別世界とは言えないことがご理解いただけると思います。
過去〜現代まで現実世界が抱えるのと同じ課題を持つ世界なのです。

英雄たる主人公 ― “選ばれし者”ではなく、“選び続ける者”へ

本作では、英雄像という過去の英雄の姿がしばしば登場し、それらになぞられて主人公一行も成長していきます。物語を通して主人公たちは、新たな力を得て様々な実績を国民に示していきます。
ですが私は本作における英雄とは、能力や実績ではなく「選択し続ける者」だと捉えています。

「選ぶ」という要素はゲームにおいて、また現実世界において当たり前の行為です。ですが、他種族への偏見や異教への畏怖は、周囲の価値観に「選ばされている」と言えます。

これもまた現実においても同様です。例えば少し前はiphoneを持っていないと学校でいじめられる、なんて話を聞いたことがあります。それを理由にiphoneを購入するとすればそれは「iphoneを選んでいる」のではなく「iphoneを選ばされている」のです。(そもそもいじめなんてもの自体が論外ですが)

主人公は、その「選ばされる世界」に立ち向かい、周囲の価値観ではなく、自分の見聞から、仲間を選び、敵を見定め、世界を変えていきます。そしてその姿に影響された者達、つまり社会的価値観ではなく、自身の見聞で世界を見始めた者達の支持を集めていくのです。

最後に

現代の社会はSNSを中心とした情報社会です。インフルエンサーと呼ばれる方々が活躍し、フォロワーはその発信をもとに商品を購入する。どこで食事をするかを判断するために口コミを参照して、お店を決める。それ自体は決して悪いことではないと思います。私も自身のゲームのレビューをまとめて、ご覧いただいている方へおすすめしています。

ただ大切なのは自身の価値観がそこに介在しているかどうかです。
人気だから、周囲の人間が悪口を言っているから、それだけに評価軸を置いてしまったらもったいないです。
周囲の意見は参考や挑戦するきっかけ程度にとどめ、それ以上は自分で決断する。
そんな当たり前であり、薄れてしまっている考え方を再認識させてくれるゲームだったと思います。
ここまでが本作に対する”私の”意見です。それ以上はぜひご自身でプレイいただき、ご自身の感想を持っていただければと思います。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

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